目次
はじめに|なぜ「アップサイクル」と「お酒」なのか?
近年、サステナブルな取り組みとして「アップサイクル」が注目を集めています。単なるリサイクルではなく、廃棄されるはずだったものに新しい価値を付与して製品化する流れです。その波は酒造業界にも広がりつつあります。
酒米の副産物、果物やパンの端材、コーヒーかすなどが「新しいお酒」や「おつまみ」に生まれ変わることで、環境負荷を減らしながらユニークな味わいを提供しています。
酒造りとアップサイクルの関わり
⚫︎酒米副産物の活用
日本酒造りでは、精米の際に米の外側が大量に削られます。
これらの「米ぬか」や「酒粕」は従来も料理や健康食品に使われてきましたが、最近では化粧品や飼料、バイオ燃料へとアップサイクルされる動きが広がっています。
⚫︎醸造副産物から新しい製品へ
ビールの醸造で出る「モルトかす」も代表例。
これまでは家畜飼料が中心でしたが、パンやクラッカー、グラノーラに再利用されるなど“食の循環”を体現する取り組みが進んでいます。
フードロス削減とクラフト酒の挑戦
⚫︎廃棄果実から生まれるお酒
規格外で市場に出せない果物を活用し、果実酒やリキュールを製造する酒蔵が増えています。
傷があっても味は変わらない果実を活用することで、農家の収入を支え、廃棄ロスを大幅に削減できます。
⚫︎パンやコーヒーかすから生まれるビール
欧州や日本のクラフトブルワリーでは、廃棄パンを糖化原料として再利用したビールや、カフェから出るコーヒーかすを副原料にしたクラフトビールが登場。
捨てられるものを活かした新しい風味は、消費者に「ストーリーと一緒に飲む楽しさ」を提供しています。
国内酒蔵・ブルワリー事例
※売り切れているものもあります。
①haccoba(福島県)と「再生ホップ」で造る新境地の日本酒

福島県南相馬市にある酒蔵・haccoba(ハッコウバ)は、奥多摩のクラフトビールメーカーVERTEREと協働し、使用済みホップを再乾燥した“再生ホップ”を用いた日本酒「HOP HOP」を2025年に発売しました。
一度ビール醸造で使われた後のホップが、トロピカルでウッディな香りに変化し、日本酒の深みと調和。山椒の新芽もアクセントとして加えられ、豊かなアロマとアップサイクル精神が共鳴する一杯です。
◾️公式HP:https://haccoba.com/
②Better life with upcycle(神奈川県)…パンのミミ×米粉でつくるヘイジーDIPA

神奈川県海老名市では、100年続くパン屋「栄屋製パン」による「Better life with upcycle」プロジェクトがあります。こちらでは、製パンで出るパンのミミと、日本酒蔵・泉橋酒造の精米過程で生まれる米粉をクラフトビールの醸造に活用した「1st Anniv. Hazy DIPA」。
パンのミミと米粉をそれぞれ麦芽の約12.5%ずつ代替することで、ほんのり甘く滑らかな口当たりのダブルIPAが誕生。グレープフルーツやベリー、ミントのホップアロマも効いた逸品です。
◾️公式HP:https://upcycle-beer.com/
③Beer the First(神奈川県)…羽田空港限定「Bready to Fly」

廃棄予定だった羽田空港のサンドイッチのパンの耳をアップサイクルし、「Bready to Fly」という発泡酒を開発。
空港限定で販売されるこちらは、美味しさとストーリーを共に届けるアップサイクル酒として多くの注目を集めており、旅行者へのお土産や話題性にも強い魅力を持っています。
④Beer the First/UTAGE BREWING…地方素材×多余物の共創型クラフト

Beer the Firstは、新ブランド「UTAGE BREWING」を立ち上げ、パンや飲食現場の食品ロス素材を使ったクラフトビールに挑戦。
「made from 麺&海苔」、麺の端材がビールに生まれ変わりました。海苔で味付けされた醤油ラーメンに合うビールです。
消費者が得られるメリット
- 環境貢献:購入することでフードロス削減や地産地消を支援
- 味の多様性:副産物だからこそ生まれる新しいフレーバーに出会える
- ストーリー性:背景を知ることで、飲む体験が特別なものになる
今後の展望|アップサイクル酒の可能性
- 地域資源の活用:地元農産物や食品副産物を取り入れることで、観光や地域活性化に直結
- 海外展開:環境意識が高い欧州市場では「サステナブル・ジャパニーズクラフト」としての発信も可能
- 体験型イベント:酒蔵やブルワリーで「アップサイクル酒づくり体験」イベントを開催すれば、観光資源にもなる
まとめ|「飲む楽しみ」と「未来への責任」をつなぐお酒
アップサイクル酒は単なるトレンドではなく、環境課題と文化を結びつける新しい酒造りの形です。私たち消費者にとっても、環境にやさしい選択をしながら個性的な味わいを楽しめるのは大きな魅力。
次にお酒を選ぶとき、「アップサイクル」という視点で探してみると、新しい発見が待っているかもしれません。

◾️この記事を書いた人
SUZU
国際唎酒師の資格を持つ日本酒好きライター。日本酒はもちろん、ひれ酒をこよなく愛しています。
取得機関:https://ssi-sake.jp/
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