
目次
はじめに|「麹づくり」とは?
日本酒造りの中でも、とくに繊細かつ重要な工程といわれるのが「麹(こうじ)づくり」です。
麹は、米のデンプンを糖に変える働きをもち、日本酒の甘さ・旨味・香りのベースを作ります。
「なんとなく“発酵”に関わってるもの?」と思っている方も多いかもしれませんが、実は麹の質がそのまま日本酒の味に直結します。
この記事では、日本酒の「麹づくり」とは何か、その工程・役割・味への影響などを初心者にもやさしく解説していきます。
麹とは?|発酵の土台をつくる

麹とは、蒸した米に麹菌(こうじきん)という微生物を繁殖させたものです。
麹菌が米に生えることで、でんぷんを分解する酵素が生成され、糖化が進みます。
この麹によって、後の発酵工程で酵母がアルコールを生み出すことができるのです。
▼ 麹が担う2大役割 ▼
役割 | 内容 |
---|---|
糖化 | 米のデンプンを糖に分解する(酵母のエサを作る) |
味の形成 | 酵素の種類や量によって、甘み・旨味・キレが変わる |
麹づくりの工程とは?

麹づくりは、専用の部屋「麹室(こうじむろ)」で、48時間ほどかけて丁寧に行われます。
温度・湿度・通気の管理が非常に繊細で、職人の腕の見せどころでもあります。
麹づくりの基本的な流れ
1.種切り(たねきり)
蒸米に麹菌の胞子(種麹)をふりかける。

2.床もみ・盛り(とこもみ・もり)
米にまんべんなく麹菌が付くように混ぜ合わせる。途中で山のように盛って発熱させる。

3.仲仕事・仕舞仕事
米の温度・湿度が高まりすぎないように、布で包んだり混ぜ返したりしながら調整。

4.出麹(でこうじ)
麹菌の繁殖が十分になった時点で、麹を完成品として回収。

この一連の作業は、「生き物のように育てる」感覚が必要とされ、長年の経験が味に大きく影響します。
麹の質が味にどう関わるのか?
麹の作り方・性質は、最終的な日本酒の味わいに多大な影響を与えます。
麹のタイプ | 味への影響 | 使われやすい酒 |
---|---|---|
酵素力が強い麹 | よく糖化されて甘口になりやすい | 貴醸酒・濃醇タイプ |
酵素力が穏やか | キレがあり、辛口に仕上がる | 辛口酒・淡麗酒 |
菌糸がよく伸びる | 香り高く、吟醸香が出やすい | 吟醸酒・大吟醸酒 |
また、麹は「白麹」「黄麹」「黒麹」など種類があり、一般的な清酒では黄麹(きこうじ)が使用されます。
麹づくりが難しい理由
麹菌は温度と湿度にとても敏感です。
一度温度が上がりすぎると、菌の働きが鈍ったり、酵素が壊れてしまったりすることもあります。
さらに、発熱する米の中心と表面では温度差があり、全体を均一に保つために何度も手入れが必要になります。
このため、麹づくりには熟練した職人の経験・直感・観察力が欠かせません。
近年の麹づくりの変化
近年では、一部の酒蔵でAIやIoTセンサーを使った麹づくりの自動管理が始まっています。
しかし、多くの酒蔵では現在も手作業による麹づくりが主流で、「手をかけた分だけ、味が深くなる」といわれています。
機械と人の感覚が共存する、まさに伝統と技術の融合が進んでいるのです。
まとめ|麹づくりは日本酒の“魂”
麹は、日本酒にとって単なる素材ではなく、酒の香り・旨味・余韻を決定づける“魂”のような存在です。
麹の役割まとめ
- 米のデンプンを糖に分解する(糖化作用)
- 酵母の活動を支えるエネルギー源をつくる
- 日本酒の香りや味わいを大きく左右する重要な存在
「麹」があるからこそ、日本酒はワインやビールにはない独特の奥行きと個性を持っています。
⬇︎こちらの記事もおすすめ⬇︎