
原料から仕込み・搾り・火入れまでやさしく解説
目次
はじめに|日本酒はどうやってできる?
「日本酒ってどうやって造るの?」
飲むのは好きでも、造り方は意外と知られていないかもしれません。
日本酒は、米・水・麹・酵母というシンプルな素材を使いながらも、
数多くの工程を経て仕上げられる、手間と知恵の結晶です。
この記事では、日本酒造りの全体像を、工程ごとにわかりやすく解説します。
読み終わる頃には、日本酒をもっと深く楽しめるはずです。
日本酒の原料|4つの素材から生まれる
日本酒は基本的に、以下の4つの原料で造られます。
- 米(酒造好適米):日本酒専用に品種改良された米。心白(しんぱく)という白く不透明な中心部を含むものが理想とされる。
- 水:仕込み、洗米、蒸しなどほぼすべての工程で使用。硬水・軟水の違いで味も変わる。
- 米麹(こめこうじ):麹菌を繁殖させた蒸米。デンプンを糖に変える働きを担う。
- 酵母:糖をアルコールへと発酵させる微生物。香りや味の個性を生む。
これらが絶妙なバランスで作用することで、銘柄ごとに個性豊かな味わいが生まれます。
日本酒の製造工程フロー
日本酒の造り方は、大まかに以下の工程で構成されます。
- 精米(せいまい)
- 洗米・浸漬・蒸米
- 製麹(せいきく)
- 酒母づくり(しゅぼ)
- もろみ仕込み(三段仕込み)
- 搾り(上槽)
- 火入れ・貯蔵・瓶詰め
ここからは、それぞれの工程を順に詳しく解説していきます。
1. 精米|旨味を磨く第一歩

「精米」とは、玄米の外側を削っていく工程です。
外層にはタンパク質や脂質が多く含まれており、これらは雑味の原因になりやすいため、削ることですっきりとした味わいに整えることができます。
精米歩合(せいまいぶあい)という数字で、「どの程度削ったか」を示します。
- 70%:本醸造酒や純米酒向け。コクのある味に。
- 60%:吟醸酒クラス。軽やかでフルーティーな香り。
- 50%以下:大吟醸酒。繊細で上品な風味。
削るほど米の中心部(心白)に近づき、味も香りも洗練されていきます。
2. 洗米・浸漬・蒸米|米を整える下準備

精米されたお米は、洗米→水に浸す(浸漬)→蒸す(蒸米)という3ステップで処理されます。
- 洗米:余計な粉(ヌカ)を取り除き、透明感のある味わいへ。
- 浸漬:適度に吸水させる。ここでの時間管理が極めて重要。
- 蒸米:炊くのではなく、蒸気で蒸すことで適度な硬さと粘りを残す。
この工程は、麹の繁殖・酵母の発酵のしやすさに直結します。
3. 製麹|麹菌が糖を生む“日本酒の心臓”

「製麹(せいきく)」は、日本酒の味を決める最も重要な工程のひとつ。
蒸米に麹菌(こうじきん)を振りかけて育て、糖化酵素を持った米=米麹をつくります。
この作業は「麹室(こうじむろ)」という高温多湿な部屋で、職人が約2日かけて温度と湿度を管理しながら行います。
できあがった麹は、米のデンプンを糖に分解し、酵母によるアルコール発酵を支える役割を果たします。
4. 酒母づくり|酵母のスターターを仕込む

酒母(しゅぼ)は、酵母を元気に育てる「スターター」のような存在。
糖と水、麹、蒸米、酵母を混ぜて、小規模に発酵させるステップです。
2週間ほどかけて、酵母の数を一気に増やします。
酒母にはいくつか種類があります。
- 速醸系酒母:乳酸を人工的に添加。近代的で安定しやすい。
- 生酛(きもと)/山廃(やまはい):乳酸菌を自然発酵で育てる伝統的手法。旨味や酸味が複雑で力強い酒になる。
5. もろみ仕込み(三段仕込み)|発酵の本番!

酒母が完成したら、麹・蒸米・水を加えて「もろみ」を仕込みます。
この段階で、本格的なアルコール発酵が始まります。
もろみは一度に仕込まず、3日間かけて段階的に行う「三段仕込み」が基本。
- 初添え → 仲添え → 留添えと、酵母の活動に合わせて原料を追加することで、健全な発酵を促します。
ここで日本酒独自の「並行複発酵(糖化とアルコール発酵が同時進行)」が進み、独特の旨味や香りが形成されていきます。
6. 搾り|酒と酒粕を分ける

発酵が終わったもろみは、搾って液体(日本酒)と固体(酒粕)に分離されます。
これを「上槽(じょうそう)」と呼びます。
搾り方にはいくつかの種類があり、風味や価格にも影響します。
- ヤブタ式:一般的な機械搾り
- 袋吊り:香りが繊細、コンテスト用や高級酒に多い
- 槽(ふね)搾り:昔ながらの伝統製法
7. 火入れ・貯蔵・瓶詰め|仕上げ工程

搾ったばかりの日本酒は、まだ酵母や酵素が生きており、変化しやすい状態です。
そこで60~65℃で火入れ(低温加熱処理)を行い、味を安定させます。
- 火入れ2回 → 一般的な清酒
- 火入れ1回 → 生貯蔵酒など
- 無火入れ → 生酒(要冷蔵、フレッシュさ重視)
その後、タンクや瓶で数ヶ月熟成させてから、出荷されます。
おわりに
造り方を知ると、日本酒はもっとおいしくなる
日本酒は、「素材 × 微生物 × 人の技術」の繊細な掛け算で生まれます。
ひとつひとつの工程が、味や香りに影響していることがわかれば、日本酒を飲む楽しみ方がきっと深まるはずです。
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