
目次
はじめに|「搾り」で日本酒が完成する!
日本酒造りの最終段階ともいえる工程が「搾り(上槽:じょうそう)」です。
ここで初めて、発酵中の「もろみ」が日本酒(液体)と酒粕(固体)に分けられます。
つまり、「搾り」とは、日本酒が“飲める酒”として形を持つ瞬間。
この工程のやり方やタイミングによって、香りや味わいにも繊細な違いが生まれます。
本記事では、日本酒の搾りとは何か?どういう方法があるのか?その違いによって味にどう影響するのか?を分かりやすく解説します。
「搾り(上槽)」とは?|もろみを清酒と酒粕に分ける
日本酒のもとである「もろみ」は、発酵が終わると「搾り」の工程へと移されます。
ここで、液体(日本酒)と固体(酒粕)に分離させることで、日本酒として完成に近づきます。
状態 | 内容 |
---|---|
搾る前 | 発酵したもろみ(液体と固形物が混ざっている) |
搾った後 | 清酒(日本酒)と酒粕(しぼりかす)に分かれる |
搾り方によって、香りの立ち方や口当たり、雑味の有無が変わるため、
蔵元によって採用する方法やタイミングはさまざまです。
搾りのタイミング|味はどう変わる?
搾りのタイミングも、日本酒の味わいに大きな影響を与えます。
タイミング | 特徴 | 味への影響 |
---|---|---|
早めに搾る | フレッシュな状態 | 軽やかで香りが立ちやすい |
長めに発酵 | 酵母の分解が進む | コクと深みが増す |
新酒の時期(冬〜春)には、もろみを若いうちに搾ったフレッシュな酒が人気になりますが、
しっかり発酵させてから搾ることで、旨味がのった落ち着いた酒質にもなります。
日本酒の搾り方|主な3つの方法

① ヤブタ式(自動圧搾機)

- 【概要】金属製の大型の圧搾機で、板とフィルターの間にもろみを入れ、機械で圧力をかけて搾る。
- 【メリット】効率がよく、大量生産に向いている。
- 【味の傾向】比較的クリアでクセの少ない味に仕上がる。
現在、多くの酒蔵がこの方法を採用しています。
② 袋吊り(ふくろづり)

- 【概要】もろみを布袋に入れ、上から吊るして自然にしたたり落ちてくる酒だけを集める。
- 【メリット】圧力をかけないため、香りと味わいが繊細に保たれる。
- 【味の傾向】上品で透明感のある仕上がり。コンテスト用や限定酒に多い。
「しずく酒」や「雫取り」などと呼ばれることもあります。
③ ふね搾り(槽搾り/ふなしぼり)

- 【概要】伝統的な木製や金属製の槽(ふね)に布袋入りのもろみを積み重ね、重みや圧力で搾る。
- 【メリット】人の手で加減しながら搾れる。風味のある酒になる。
- 【味の傾向】旨味を引き出したクラシックな味わい。
「あらばしり」「中取り」「責め」とは?
搾りの途中でも、流れ出てくる酒の質は変わってきます。
そのため、搾る順番ごとに名前が付けられており、それぞれ風味が異なります。
名称 | タイミング | 特徴 |
---|---|---|
あらばしり | 最初 | フレッシュで荒々しい香味 |
中取り(中汲み) | 真ん中 | バランスが良く品質が安定。 最も評価が高いことが多い |
責め | 最後 | 味が濃く、雑味も出やすいが力強い |
ラベルにこれらの表記がある場合は、ぜひ味わいの違いにも注目してみてください。
まとめ|「搾り」は日本酒の最終演出
「搾り」は、日本酒造りの最後を締めくくる重要な工程です。
方法やタイミングによって、同じもろみからでも全く異なる味が生まれるのが、この工程の奥深さです。
搾りのポイントまとめ
- 搾りとは、もろみを清酒と酒粕に分ける工程
- 搾るタイミングによって、味のフレッシュさや深みが変わる
- 搾り方の違い(ヤブタ・袋吊り・ふね)によって、風味に個性が生まれる
- あらばしり・中取り・責めといった搾り順でも、風味の差を楽しめる
日本酒を選ぶとき、「搾りの方法」や「中取り」の表記を見つけたら、
そのお酒がどんな風に“最後の一滴まで”丁寧に造られたのか、思いを巡らせてみてください。
⬇︎こちらの記事もおすすめ⬇︎