
目次
はじめに|日本酒は“火を入れて”仕上げられる
火入れとは、日本酒を一度低温加熱することで、品質を安定させる工程のこと。
実は多くの日本酒が、出荷前にこの「火入れ」を受けて仕上げられています。
でも、なぜ“火を入れる”必要があるのでしょうか?
この記事では、「火入れ」の意味と目的、種類、味への影響についてわかりやすく解説します。
火入れとは?|60〜65℃の“低温殺菌”
火入れとは、搾ったあとの日本酒を60〜65℃前後で一時的に加熱処理する工程のことです。
この工程によって、以下のような目的が達成されます。
▼ 火入れの主な目的
- 酵母・酵素の働きを止める
└ 発酵や味の変化を抑えて、品質を安定させる - 雑菌の繁殖を防ぐ
└ 衛生的で保存性の高い日本酒に仕上げる - 味わいの調整
└ 火入れによって角が取れ、まろやかで落ち着いた味わいになる
火入れをしないとどうなる?

火入れをしない「生酒(なまざけ)」は、酵素や酵母が生きたまま残っており、風味はフレッシュで香り高いのが特徴。
しかし、同時に劣化や変質が早く、冷蔵保存が必須になります。
つまり、火入れは「安定性」と「味の落ち着き」を生むために欠かせない工程なのです。
火入れの種類|回数によって変わる風味
日本酒は、火入れの回数によっても分類され、ラベルなどに表記されていることがあります。
火入れは、酵母や酵素の働きを止めるだけでなく、日本酒の味そのものを“落ち着かせる”効果もあります。

タイプ | 火入れ回数 | 特徴 |
---|---|---|
通常の火入れ酒 | 2回(搾った後+瓶詰め前) | 保存性◎。安定した味 |
生貯蔵酒 | 1回(瓶詰め前のみ) | フレッシュさと安定性の中間 |
生詰め酒 | 1回(搾った後のみ) | 生感を残しつつ保存性あり |
生酒 | 火入れなし | 香り高くフレッシュ、要冷蔵 |
火入れの回数が少ないほど、フレッシュで軽快な味わいになりますが、その分温度管理がシビアになります。
火入れの方法と技術
現在の火入れは「低温パスチャライゼーション(低温殺菌法)」に近く、
一気に高温で殺菌するのではなく、じっくり温めてじっくり冷ますことで酒質へのダメージを最小限に抑えています。
▼ 主な加熱方法
- 流通式:酒をパイプ状のヒーターで温めながら流す方法。効率的で品質も安定。
- 瓶燗(びんかん)火入れ:瓶詰めした状態でお湯につけて加熱する。手間はかかるが香りを閉じ込めやすい。
- 湯煎式:タンクごと加熱。伝統的な方法で熟成感が出やすい。
火入れの方法によっても、香りの立ち方や味の丸みなどが微妙に変わってきます。
まとめ|火入れは“日本酒の最終調整”
火入れは、日本酒を仕上げるうえで非常に重要な工程のひとつ。
酒の保存性を高め、味の安定をもたらすだけでなく、酒の個性を整える“最終調整”のような存在です。
- 酒の酵母や酵素の働きを止めて、保存性を高める
- 火入れの回数や方法によって、香りや味わいに違いが出る
- 「生酒」「生詰め」「生貯蔵酒」などの表記にも注目すると選びやすくなる
次に日本酒を選ぶときは、ラベルの「火入れ」の文字にぜひ注目してみてください。
“どのくらいの火”が、その一杯を仕上げたのか…その違いを味わうのもまた、日本酒の楽しみ方のひとつです。
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