
目次
はじめに|日本酒は“発酵”でできている
日本酒造りに欠かせないキーワードのひとつが「もろみ」です。
お酒の製造過程でよく聞く言葉ですが、「なんとなく聞いたことはあるけど、正体はよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
実はこの「もろみ」は、日本酒の味・香り・アルコール度数など、すべてを決める発酵の主役。
この記事では、「もろみ」とは何か、その工程や発酵の仕組みをわかりやすく解説します。
「もろみ」とは?|日本酒が“発酵中”の状態
「もろみ」とは、酒母・麹・蒸米・水を一緒に仕込み、発酵させている状態の液体のことです。
この中で酵母が糖をアルコールに変えることで、日本酒が生まれていきます。
つまり、「もろみ」とは、まだ“完成していない日本酒”であり、発酵真っ最中の状態を指します。
このもろみの状態で、味や香り、アルコール度数、甘さ・辛さなどが決まっていくため、酒造りの中でも非常に重要なプロセスです。
もろみの仕込み|「三段仕込み」とは?

もろみの仕込みは、一度にすべての材料を入れるのではなく、3回に分けて仕込む「三段仕込み」という方法が使われます。
これは酵母の働きを弱らせず、安定した発酵を進めるための日本独自の技法です。
▼ 三段仕込みの流れ
段階 | 内容 |
---|---|
初添え(はつぞえ) | 最初に麹・蒸米・水を少量加える |
仲添え(なかぞえ) | 翌日に2回目の原料を追加 |
留添え(とめぞえ) | さらに翌日、最も多くの原料を加える |
このように段階的に仕込むことで、酵母が急激な変化にさらされることなく、安定して増殖・発酵していくのです。
もろみの発酵|「並行複発酵」のすごさ

日本酒のもろみでは、世界でも珍しい「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」という発酵方法が行われています。
これは、以下の2つの発酵が同時に進行することを指します。
発酵の種類 | 働き | 原 料 |
---|---|---|
糖化 | 米のデンプンを糖に変える | 麹 |
アルコール発酵 | 糖をアルコールに変える | 酵母 |
この並行複発酵によって、高いアルコール度数(15〜16%)でありながら、風味豊かで繊細な味わいの日本酒が生まれるのです。
ワインやビールでは糖とアルコールの発酵は別々に進みますが、日本酒だけがこの同時進行を実現しています。
発酵期間と管理|味が決まる勝負の時間
もろみの発酵期間は通常20日〜30日ほど。
この期間中、蔵人たちは毎日タンクを観察し、温度や香り、泡の立ち方などを細かくチェックしていきます。
- 温度が高すぎる → 酵母が死んでしまう
- 温度が低すぎる → 発酵が進まず未完成に
- 酵母が元気すぎる → 香りが飛びやすい
このように、発酵中のもろみは非常に繊細。毎日の観察と判断が、酒の質を左右するのです。
発酵が終わると…「搾り」へ
もろみの発酵が完了すると、次は「搾り(上槽:じょうそう)」という工程に移ります。
ここで、液体(清酒)と固体(酒粕)に分けられ、日本酒としての形が整います。
もろみの状態が味を決める!
発酵のコントロールは、そのまま日本酒の味づくりそのものです。
発酵条件 | 仕上がる酒の特徴 |
---|---|
低温でゆっくり | 吟醸香が立つ、華やかな香り |
高温で速やかに | 濃厚で旨味のある味わい |
酵母が多い | アルコール高め、フルーティ |
酵母が少ない | 軽やかで淡麗な仕上がり |
日本酒の多様性は、このもろみの発酵管理の巧みさによって生まれています。
まとめ|「もろみ」は日本酒の“生まれる場所”
「もろみ」は、日本酒の命が宿る発酵の現場です。
- 酒母・麹・蒸米・水を混ぜた、発酵中の状態を指す
- 三段仕込みによって、安定した発酵を促す
- 並行複発酵により、高いアルコール度数と豊かな味わいを実現
- 発酵の温度・期間・管理が、香り・味・キレを決定づける
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