
「曲水の宴(きょくすいのうたげ)」とは、日本の平安時代に貴族たちが行っていた、春の訪れを祝う優雅な酒宴行事です。
日本酒と深い縁があるこの宴は、日本酒の歴史や文化を語る上でも欠かせない存在です。
目次
曲水の宴とは?|水辺を流れる盃と詩の世界

曲水の宴とは、庭園に設けられた曲がりくねった小川(曲水)のほとりに座り、流れてくる盃(さかずき)を詠んだ詩が完成するまでに取り上げて飲むという宴のことです。
起源は中国の六朝時代の風習とされ、日本には奈良時代に伝わり、平安時代に貴族社会の雅な年中行事として定着しました。
曲水の宴のルール|盃が流れる中で詩を詠む

曲水の宴では、清らかな小川に浮かべられた盃が参加者の前をゆっくり流れていきます。
参加者はその盃を受け取り、即興で詩を詠むことが求められました。
詩が完成しないうちに盃が自分のもとに流れてきた場合は、その場で詩を詠み、詠んだ後に日本酒を飲むというしきたりがありました。
このルールは、詩を詠むことで知性や感受性を示す文化的行為として重要視されました。
読まれた詩|自然と酒、そして季節感
曲水の宴で詠まれた詩には和歌や漢詩が用いられました。特に和歌は5-7-5-7-7の形式で、季節や自然を題材にしたものが多く、酒を飲みながらその時の風景を詠むことが求められました。
たとえば、春の訪れを祝う詩としては次のようなものがありました。
「春の夜の 夢の浮橋と 知りながら 見し我が身を いかにせむ」
(春の夜、夢のように浮かぶ橋を知りつつ、その夢を見た私はどうすればよいのか)
この和歌は春の夜の幻想的な情景を描写し、流れる水と春の移ろいを感じさせるものです。
曲水の宴と日本酒|詩と酒が交わる至高の時間
曲水の宴では、日本酒は単なる「酔うための飲み物」ではなく、「知性と情緒を引き出す文化的触媒」としての役割を担っていました。
参加者は、詩を詠みながら流れる水の美しさや季節を楽しみ、詩と酒が一体となる極めて文化的な場でした。宴は、自然との調和を感じながら、教養を深める時間として重要視されました。
現代に続く曲水の宴|今も続く日本酒の伝統

平安時代を代表する宮中行事であった曲水の宴は、現在でも一部の神社や文化施設で再現されています。
例えば、福岡県の太宰府天満宮や京都の城南宮では、毎年曲水の宴が開催され、参加者は和歌を詠み、盃を受け取りながら日本酒を楽しむ光景が広がります。
現代でも、この儀式は日本酒と季節、詩の深い結びつきを感じさせる貴重な体験として、多くの人々に親しまれています。
まとめ|曲水の宴が教える、日本酒の文化的魅力
曲水の宴は、単なる酒宴ではなく、詩と日本酒が交わる文化的な儀式でした。
酒を飲みながら詩を詠むことが、平安貴族たちにとって知性や教養を示す手段であり、また自然との調和を楽しむ時間でもありました。
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