
目次
日本酒の「生酒(なまざけ)」とは?
「生酒」とは、火入れ(加熱殺菌)を一切していない日本酒のことを指します。一般的な日本酒は、製造過程で2回の火入れを行い、酵母や微生物の働きを止め、品質の安定を図ります。一方、生酒はこの火入れを行わないため、酵母や酵素が生きたまま瓶詰めされるのが特徴です。
その結果、フレッシュでフルーティー、時には微発泡を感じるような、生き生きとした味わいを楽しむことができます。
「生酒」、「生貯蔵酒」、「生詰め酒」の違い
「生酒」と似た名称でよく登場するのが、「生貯蔵酒」や「生詰め酒」です。
どれも「生」の名前がつきますが、火入れの回数とタイミングによって、香味や保存方法が異なります。

名称 | 火入れのタイミング | 特徴 |
---|---|---|
生酒 | 一切火入れしない | 非常にフレッシュ・要冷蔵 |
生貯蔵酒 | 瓶詰め後に火入れしない | ほどよい熟成感と鮮度が特徴 |
生詰め酒 | 瓶詰め前に一度だけ火入れ | フレッシュさと安定性の両立 |
◾️生酒:味の特徴と魅力

生酒(なまざけ)は、火入れを一切行わずに瓶詰めされた日本酒です。その最大の特徴は、フレッシュでみずみずしい味わいです。
味わいの特徴
- 酵母や酵素が生きており、口に含むとフルーティーでピチピチとした印象
- 新鮮な果実を思わせるような華やかな香り
- やや甘みを感じやすく、ジューシーな旨味が広がる
- 銘柄によってはわずかな発泡感を感じるものもある
魅力と楽しみ方
- 日本酒の「できたて」の魅力を楽しめる
- 温度や時間によって味が変化し、育てる楽しみもある
- 冷酒で飲むと、より一層爽やかさが引き立つ
火入れされていないため、保存には細心の注意が必要ですが、そのぶん、生きた酒の醍醐味を存分に堪能できます。
◾️生貯蔵酒:味の特徴と魅力

生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)は、生酒の状態で貯蔵され、出荷前に1回だけ火入れを行う日本酒です。
生詰め酒とは火入れのタイミングが異なり、こちらは貯蔵中に熟成が進みます。生酒に近いフレッシュさを持ちつつ、やや熟成感のある味わいが特徴です
味わいの特徴
- 生酒に近いみずみずしさや爽やかな香りが楽しめる
- 出荷前の火入れにより、品質の安定感が高い
- 熟成感もありながら、軽快ですっきりした口当たり
夏に多く出回る生貯蔵酒は、冷やして飲むのにぴったりで、暑い季節の一杯として定番です。
魅力と楽しみ方
- 生酒の魅力と火入れの安定性を兼ね備えたバランスの良さ
- 生酒よりも扱いやすく、スーパーなどでも手軽に購入可能
- ただし、冷蔵保存が基本で、開封後は早めの飲用がおすすめ
◾️生詰め酒:味の特徴と魅力

生詰め酒(なまづめしゅ)は、搾ったあとに一度火入れ(加熱殺菌)を行い、低温で貯蔵され、瓶詰め時には火入れをしない日本酒です。
生酒のようなフレッシュな風味を残しながら、熟成によってまろやかで落ち着いた味わいを持つのが特徴です。
味わいの特徴
- 生酒に近い爽やかさと香りが楽しめる
- 火入れにより酸味が穏やかになり、味に丸みが出る
- 熟成が進んだことによる深みやコクも感じられる
特に秋に出回る「ひやおろし」や「秋あがり」はこの生詰め酒に該当し、ひと夏の熟成を経たまろやかな風味が楽しめる日本酒として人気です。
魅力と楽しみ方
- 味に丸みがあり、食中酒としても万能
- 一度火入れしているため、生酒よりも比較的劣化しにくい
- それでも香味の変化が早いため、冷蔵保存が推奨され、開封後はなるべく早く飲み切るのがベストです
「生原酒」、「無濾過生原酒」の違い
「生酒」はさらに製造方法の違いにより「生原酒(なまげんしゅ)」と「無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)」という種類があります。
◾️生原酒(なまげんしゅ)とは

「生原酒」は、火入れ(加熱処理)を一切していないうえに、加水調整もしていない原酒のことを指します。日本酒本来の濃厚な味わいが楽しめます。
- “生”:火入れをしていないため、酵素が生きていて香味が活発
- “原酒”:搾ったあとに加水せず、アルコール度数が高め(17〜20度程度)
◾️無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)とは

「無濾過生原酒」は、「生原酒」の条件に加えて、濾過(ろ過)も行っていない日本酒です。
濾過を行わないことで、ほんのりとした黄金色を帯びており、さらに加水(割水)もしていない原酒であるため、味わいは濃厚で力強く、飲みごたえのある仕上がりとなっています。
- “無濾過”:酒を絞ったあとに濾過をせず、そのまま瓶詰め
- “生”:火入れなし
- “原酒”:加水調整なし
保存方法と取り扱いの注意点
生酒は、必ず冷蔵保存が必要です。加熱処理されていないため、温度管理が不十分だと再発酵や品質劣化が起こることがあります。
保存のポイント
- 購入後はすぐに冷蔵庫へ
- 温度が一定の場所で保存(5℃前後が理想)
- 開栓後はできるだけ早く飲み切る(目安は1週間以内)
また、生酒は流通にも細心の注意が必要なため、取り扱っている酒販店が限られているのも特徴です。
生酒に合う料理とは?

生酒の爽やかでフルーティーな味わいは、素材の味を生かしたシンプルな料理との相性が抜群です。
- 冷奴
さっぱりとした味わいで、生酒の風味を邪魔しません。薬味で変化を楽しめます。 - お刺身
特に白身魚や貝類は、生酒の爽やかさと相性抜群です。 - 焼き魚
塩焼きなど、シンプルに焼いた魚は、生酒の風味を引き立てます。 - 白身魚の天ぷら
揚げたての香ばしさと、生酒のフレッシュさがマッチします。 - 湯豆腐
豆腐の優しい味わいと、生酒の香りが調和します。 - ハーブや柑橘系の風味を添えた料理
ハーブを効かせたカルパッチョや、柑橘系のドレッシングをかけたサラダなど。
味が繊細なので、濃いタレや味噌などは避けるのがベターです。
まとめ:生酒は日本酒の“生きた美味しさ”
「生酒」は、加熱処理をしないことで日本酒本来の香りと味わいを最大限に楽しめる特別な一本です。保存に手間はかかりますが、それを上回るだけの新鮮な驚きと感動があります。
火入れされた日本酒とは違った魅力をぜひ味わってみてください。

◾️この記事を書いた人
SUZU
国際唎酒師の資格を持つ日本酒好きライター。日本酒はもちろん、ひれ酒をこよなく愛しています。
取得機関:https://ssi-sake.jp/
こちらの記事もおすすめ